皆さまこんにちは。溝の口店の大友です。

お盆を過ぎてもなかなか暑さが落ち着きませんね。今年は10月頃まで残暑が続くらしいので、秋の涼しさが待ち遠しいところです。暑さのせいか苦手なセミをあまり見かけないので、その点だけは救われています(笑)。まだしばらくは熱中症対策を忘れず、元気にお過ごしください。

さて、バーで働いていて面白いなぁと感じることは様々にありますが、ひとつは同じ一杯を飲んでも、人によって全然酔い方が違うということです。

顔がすぐ赤くなる人もいれば、青白くなってしまう人もいる。陽気になっておしゃべりが止まらなくなる人もいれば、静かに眠くなってしまう人もいます。中には「何杯飲んでも顔色ひとつ変わらない」なんて鉄人のような方もいますよね。

今日はそんな「人によって酔い方が違うのはなぜ?」というテーマで、ちょっとした雑学をお届けします。

まず大前提として、お酒の強さや酔い方の違いは「体質」が大きく関係しています。体に入ったアルコールは肝臓で分解されますが、このときに登場するのが「ALDH(アルデヒド脱水素酵素)」という酵素。これがテキパキ働く人は、酔っても顔に出にくく、比較的お酒に強いタイプ。一方、この酵素の働きがゆっくりな人は、少量でも顔が赤くなりやすいんです。

日本人はこの「酵素がのんびり屋さんタイプ」の割合が多いといわれています。だから「赤くなる=お酒に弱い」というのは、根性や精神力の問題ではなく、その人の体質そのもの。基本的には飲み続けることで強くなったりはしません。

ただ、面白いのは「お酒に強い弱い」だけでなく、「酔い方のパターン」が人によって違うことです。

  • 笑い上戸
  • 泣き上戸
  • 怒り上戸
  • 寝ちゃうタイプ

などなど。これ、実は脳の神経伝達物質の働きと関係があります。アルコールは脳に入ると、抑制系の神経をゆるめてしまうんです。つまり「普段は隠している性格」が表に出やすくなる。普段から明るい人はさらに陽気になり、我慢強い人は感情が決壊して泣いてしまう、なんてことも。お酒は“心の素顔を映す鏡”とも言えるかもしれませんね。

そして酔い方は「その日の体調」でも大きく変わります。

「昨日は平気だったのに、今日はすぐ酔った」という経験は、多くの方にあるのではないでしょうか。

  • 睡眠不足:脳の働きが鈍くなっているため、アルコールが回りやすく、酔いも強く感じやすい。
  • 疲労:筋肉や肝臓のエネルギーが消耗している状態だと、アルコールの処理能力も落ちやすい。
  • 空腹:胃に食べ物がないとアルコールがすぐに血液に吸収され、短時間で酔いが回る。
  • 脱水:汗をかいた後や真夏の飲み始めは、体内の水分が不足していて、酔いの感覚が強まることがある。

逆に、よく眠れた日や栄養をしっかり取った日には、同じ量を飲んでも「今日は楽だな」と感じたりします。つまり酔い方は、体質だけでなく、その日のコンディション次第でいくらでも変わるのです。

バーテンダーをしていると、お客様から「いつもは全然平気なのに、今日は一杯でお酒が回っちゃう」なんて言葉を聞くことがあります。そんなときは「お疲れなのかもしれませんね」なんて返したりしますが、実際に科学的にも、体調が酔い方を左右するのは間違いないんです。

さらに酔い方に影響を与えるのは、「誰と」「どこで」飲んでいるかという環境の違いです。

安心できる仲間と一緒のときは、気持ちが緩んで楽しく酔えるものですし、緊張する場では不思議と酔いを感じにくかったりします。心理的な影響も酔い方に直結するんですね。

お客様の中には「この店だと不思議と飲みすぎないんだよね」とおっしゃる方がいます。居心地の良さや、ペースを自然と調整できる雰囲気があると、酔い方も変わってくるのだと思います。これもまた、バーという場所の魅力のひとつなのかもしれません。
まとめると──

  •  酵素の働き(体質)
  • 脳の反応(性格や感情)
  •  その日の体調
  •  飲む環境や相手

これらが組み合わさって、人それぞれ酔い方が変わっていきます。

だから「酔って騒ぐ人」も「静かに眠る人」も、どちらもその人らしさが出ているだけ。強い・弱いの優劣ではなく、それぞれの違いを受け入れると、飲みの場はもっと楽しくなります。

お酒は人の数だけ酔い方があります。泣く人、笑う人、眠る人、黙る人……それぞれが混ざり合うからこそ、バーの空間は彩り豊かになります。

私たちバーテンダーは、その一杯をお作りしながら、さまざまなお客様の酔い方に出会います。強い弱いよりも「どんな酔い方をするか」を知ることが、その人と一緒に過ごす時間をより面白くしてくれるのだと思います。

今夜も、皆さまらしい酔い方に寄り添える一杯をご用意してお待ちしております。

大友